LVII-th stone: Turing Award
調べてみると、計算機科学の歴史をまとめたWebpageはいろいろあるようだ。以下に何点かあげておく
・An Overview Of Computational Science
・A Very Brief History of Computer Science
ということで、ここを読めば私の思っている理論計算機科学のおおまかな歴史が理解できそうであるが、やはり自分で何もしないというのも気が引けるので計算機科学でもっとも権威のある"チューリング賞(Turing Award)"の歴代受賞者を調べてみようと思う。
この賞は1966年にACM(Association for Compuitng Machinery)が始めた賞で、毎年情報科学、計算機科学分野の発展に多大な貢献をもたらした研究者に送られる物で、ノーベル賞や数学界のノーベル賞ともいわれるフィールズ賞とならんで”コンピュータ界のノーベル賞”とも言われる世界最高権威の賞である。この賞の歴代の受賞者の貢献を調べてけば自ずとこの賞ができて以来の歴史が明らかになると考えたからである。
この賞は"Turing"という名を冠しているが、この名はかの有名な数学者Alan Mathison Turing(1912--1954)に由来している。まず彼について書きたいと思う。
彼はロンドンで生まれ、。1931年ケンブリッジ大学キングズ・カレッジに入学、後にフェロー。1936年に入学したアメリカのプリンストン大学で博士号を修得。1938年にイギリスに戻り、大学で研究した。彼は、チャールズ=バベッジがコンピュータの原型を考案してから百年後の1937年、当時24才にして仮想論理機械の理論を発表。この仮想理論機械が「チューリング・マシン」と呼ばれ、ここに現在のコピュータの論理の原型ができあがったのだ。彼は第二次世界大戦時においてはブレッチリーの政府暗号学校GCCS(現GCHQ)に入り、ドイツ軍のエニグマ暗号の理論的解読に成功し、その理論による解読機械 The Bombe を開発。その後、1944年に世界初のコンピュータ Colossus も作り上げた。
また彼は人工知能分野においても先駆的な研究を行っている。”機械は考えることができるのか”という問いを研究し、論文を発表している。この結果は後に”チューリングテスト”と呼ばれるテストを生み、このテストに合格すれば機械は考えていると結論できると言われている。しかし当然?のことながら今のところ合格した機械は無い。
1952年に、彼は当時タブーであった同性愛者の疑いをかけられ逮捕される。そして1954年に青酸カリ入りのリンゴを食べ命を絶ったとのことである。この彼の業績を考えれば、彼の名をたたえた”チューリング賞”が今でももっとも権威のある賞の一つである事も納得できるであろう。